社会福祉法人 渡保育園 子どもたちをまんなかに
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ふくろう園長のひとりごと


『いのちの音』

3月9日、今年も園長の年長児に対する最後の特設保育「いのちの体感」を行いました。

 担任には、「天気がよい日に行ないたい」と申し入れていたのですが、春近い今日この頃の天候は、予測するのは至難のことです。8日は、ポカポカの上天気でした。明日は大丈夫と喜んでいたのに9日は朝から今にも降り出しそうな空模様で、とうとう予定の2時前には、本格的な雨が降り出してしまいました。
 3月の保育園、特に年長児クラスは何かと予定が混み合っています。止むを得ません。計画どおり2時に年長児は仮設園舎から雨の中を渡保育園自慢の“絵本館”に移動し、私の特設保育に参加しました。
 私が“天気のよい日を”と担任に申し入れたのには、実はわけがあったのです。
 渡保育園では1980から「平和保育」を行い今年26回目を迎えます。当初は長崎原爆忌の8月9日をしていましたが、現在は毎年年間カリキュラムを立て8月9日を中心に1週間を平和保育週間として平和のこと、いのちの大切さ、世界中の子どもたちと仲良くすることなどを学びあいます。
そして、卒園を間近かに控えた年長児の子どもたちに園長からの最後のメッセージとして、“いのちの大切さを実感する”保育を特設したのでした。
 絵本館のテーブルの回りに座った19名の年長児に「みんなはいのちを持っているかなー」と聞くと一斉に「もっているよ」の返事が返ってきます。
「そのいのち、どこに持っている。ここかな、ここかな」と頭や胸などを指で示すと、「ここー」と殆どの子が胸を押さえます。「じゃあ、足の先はどう。手の先はどうかな」と云うと2,3人の子どもが「そこも、体いっぱい」と答えました。
「いのちの音、聞いたことがありますか」と聞くと「なーい、ありません。」そこで、用意しておいた、ドクター用とナース用の2個の聴診器を取り出し担任に協力してもらって、全員が自分の胸の音と友だちの胸の音を聴診器を当てて、自分の耳で確認しました。
「おれの心臓の音聞こえた。」「○○ちゃんのは、ドッドッドッて聞こえたよ」「手はなんか、サーッて聞こえた」と全員大変な興奮状態です。
 全員が落ち着いたところで、絵本「ふたごの木」谷川俊太郎・文、姉崎一馬・写真、を読んで聞かせました。

 昔、小鳥に運ばれて空の旅をしたエゾヤマザクラの種子が古い木の切株に2本のふたごの木として芽を出して育ち、ふたりでみえること、感じることなど、いろんなはなしをしていることをすてきな写真で綴った絵本です。

 聴診器で「いのちの音」を聞いたあとだけに、みんなとても真剣に聴いて呉れました。

 最後にこんな話をしました。

「私たちは、それぞれお父さん、お母さんから一つづつの大切ないのちをもらっています。聴診器で聞いたいのちの音は、自分のもお友だちのも同じ音だったと思いますよ。だから、自分のいのちと同じようにお友だちのいのちもとても大切にしなければならないということが分かった筈です。
 絵本のヤマザクラのふたごの木は、鳥に運ばれ芽を出した丘の上で、動くことなく何年何拾年の一生を過ごします。草や木もいのちをもって生きています。みんなが、お友だちを大切にするのと同じように草や木のいのちも大切にして下さい。」

 渡保育園には、かきえちゃん、かきまるくんという長崎から移された被爆二世柿の木が、平和保育のシンボルツリーとして大切にされています。(この木のことは、後日紹介することになると思います。)実は、この柿の木の樹液の流れる音を子どもたちに聴診器で聴きとり、人間だけでなく、木や草も生きていることを実感してもらう予定でしたが、残念乍ら、生憎の雨のため出来ませんでした。後日天気のよい日に、実施する予定です。
 一年間を通じての平和保育は、これで今年も終りですが、いのちの大切さを分かってほしいと強く今年も思い乍ら特設保育を終わりました。

                             平成18年3月



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